スマホの普及により、漫画は「紙で読む時代」から「紙か電子か選べる時代」になりましたね。最近はもっぱらスマホだわ!という方も多いと思います。
で、スマホで漫画を読んでいると、こんな経験ありませんか?

お気に入りの作品、更新されないままなんだが…

気付いたら連載が終わってたw
はじめに書いてしまうと、その作品は「利益が見込めないと判断されてしまった」可能性が高いのです。俗に言う、打ち切りです。
どうしてこんなことが起きるのか?作品を管理する編集側が、連載を続けても売上は期待できないと考えたから。
この結論が一旦出されると、殆どの作品は展開がどうであれ、連載終了へ向かいます。
残りの掲載回数に余裕があって自由に描けるパターンもあれば、「あと○回分で終わらせてください」とページ数が限られたり、連載の更新も打ち切りのお知らせもないまま、フェードアウトしていくパターンなどもあります。
では、この打ち切りを回避するためには、そして好きな作品に長く連載してもらうためには、読者は何ができるのか?
本記事でわかりやすく解説していきます。それでは、次の項目からどうぞ。
単行本の売上でその後が決まる
打ち切りと言えば、人気雑誌・週刊少年ジャンプを連想する方は多いでしょう。読者アンケート至上主義とも言われた程ですもんね(※編集部側はこれを否定)。
そのジャンプも、2014年からはウェブでも読める「少年ジャンプ+」を運営中。元編集部で現ジャンプ+を支える細野さん曰く『近年は紙だけの時代ではなく、判断指標が複雑でわかりにくい』のが現状だそう。
ネット上での連載作品も増えた現在、読者アンケートもない環境で、どうやって打ち切りの作品を決めるのでしょうか?
***
実際に作品が打ち切られた漫画家さんのSNSを見ると(他連載との兼ね合いなど作者都合を除くと)、ほぼ理由はひとつです。
「単行本の売上が悪くて…」
つまり、出版社によって細かい判断材料は異なるけれど、確実に共通するのは【単行本の売上が悪いと、連載は続かない可能性が高い】ということ。
特に単行本は、紙版の売上(特に発売1週間以内の動き)が重視される傾向にあるようです。
作者メッセージで『紙で買ってくれ』『書店になければ取り寄せてほしい』といった声がある理由は、これ。紙の単行本が、連載の“その後”を決めるから。書店で取り寄せれば、在庫が動くので。
だから、買ってもらうために書店別の購入特典が用意されたり、Twitterなどで一部分を無料公開するのです。
これは1~2巻刊行時だけでなく、連載がある程度続いた作品でも起こる可能性があります。近年だと『群青にサイレン』が該当します。

この作品は「月刊YOU」連載でしたが、休刊に伴い「ジャンプ+」へ移籍。10巻以上刊行されたものの、売上が振わず完結。
連載中に移籍があった作品なので、他の理由もあった可能性がありますが、こういうラストもあるってことですね。
***
では、一度打ち切り(候補)になった作品は、絶対再開されないのでしょうか?
実は、打ち切りから復活する作品がないわけではありません。
打ち切りから復活した作品
連載終了後に復活、または直前に打ち切りを回避できた作品の一部を見てみましょう!

復活して間もない作品は除外しています
女子高生の無駄づかい(2015 – 現在)

2015年、KADOKAWA「ComicWalker」にて商業連載開始。2017年、新刊が出ないことを告知。
ところが、打ち切り後にアニメ化の話が舞い込むわ、単行本がジワジワと売れて重版になるわで、9カ月後に連載再開。
現在も同社「コミックNewtype」にて連載中…だけでなく、2020年はドラマ化にまで発展。
近年の漫画界で最も波乱万丈、と言える作品のひとつでしょう。
パパと親父のウチご飯(2014 – 2020)

2014年、新潮社「月刊コミック@バンチ」にて連載開始。
2017年、巻数が増えたことや海賊版サイトの影響により売上が伸び悩み、打ち切りの危機に。
ところが、もうひとつの連載『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』のヒットに連動して、本作も重版がかかります!
連載は継続となり、全13巻で完結となりました。
つぶつぶ生活(2011 – 2018)

2011年、講談社「Kiss」にて連載開始。2013年、編集部より連載打ち切り&新作の提案があり、連載継続を選択。
その後、クラウドファンディングにより制作資金を募り、続編執筆。大手配信サイト・まんが王国でも配信され、エンディングを迎えました。
ライジングインパクト(1998 – 2002)

1998年「週刊少年ジャンプ」にて連載開始。翌年3月に打ち切られるも、終了後の読者反響が大きく、編集部は再連載を決めました。
最終的には再連載も打ち切られるのですが、ジャンプコミックスで全17巻の人気作になりました。
***
以上、打ち切りから復活した4作品を紹介しました。
…ですが、このうち『パパと親父のウチご飯』は他連載の影響、『つぶつぶ生活』は作者に連載継続の権利があったこと、『ライジングインパクト』はネットが普及する前の作品――という点を考慮すると…
打ち切り判断された後、連載を復活させる難しさがわかると思います。
当然、打ち切りを受け入れられない担当編集や作者が宣伝を頑張っても、連載再開とはならなかったケースもあるワケで…(こちらのケースが殆どでしょうね)。
となると、読者ができることはもう“アレ”しかないのです。
迷ってるなら、単行本は買おう
結局は、お金を出すことが作品への最大の応援です。そして今の時代、ここに「書店・オンラインでの購入する」って条件がつきます。
出版社は漫画を含めた「作品」を作って売ってお金を得る場所なので、当たり前の話ですけど。
もちろん、SNSでの拡散や連載元の応援機能(あれば)を活用するのも方法のひとつ。でも、一番は出版社に利益が生まれるかどうか。
漫画との付き合い方がどれだけ変わっても、変わらない部分ですね。
紙の単行本がない作品は?
紙の単行本が出ておらず、電子書籍のみの作品でも同じです。
というか、電子書籍のみの発売には理由があります。紙の単行本まで作ると採算がとれないパターンです。1巻は紙&電子書籍で発売したのに、2巻は電子書籍のみ…という作品ありますよね。あれの逆パターン。
なので、電子書籍のみの作品は、売上が好調であれば紙の単行本が刊行される場合もあります。
最近だと『にぶんのいち夫婦』がこのパターンでしたね。
連載中の作品は?
では、まだ単行本が出ていない作品はどう応援したらいいだろう。これは連載元(出版社)によって連載の判断基準が異なります。基準を公開していない連載元もあるので、参考としてどうぞ。
例えば「LINEマンガ」で本連載中の作者によると、LINEマンガのトライアル作品(※期間限定連載)は「読者数」が重視されるとのこと。読者が多いほうが作品を展開しやすいんだそうです。
LINEマンガはアプリで読むものなので、ブラウザ上でも読める漫画サイトでいうと「閲覧数」でしょうか。
結局数字が決めるんすよ。ネットって。
つまり、単行本が出ていない作品の応援は「友達におすすめする」「SNSで拡散する」が確実な方法ってことですね。

これなら、LINEマンガに限らず殆どの作品でできるね!
フリマ購入や海賊版がダメな理由
一応触れておきたいのですが、作品が続いてほしいのであれば、以下のような購入・閲覧は辞めておきましょう。
これらは「出版社や作者にお金が入る」方法ではありません。作品のヒットを願ったり、作者へお金を渡したいなら控えたほうがいいです。
私も、お金がない時はブック◯フの常連でした。少しでも安く買いたい気持ちは非常にわかります。使うの辞めよ?なんて言えるはずがない。
だからフリマアプリや中古ショップを使う際は、どれだけ単行本を買っても売上には全く貢献できないこと、出版社や作者には一切お金が入らないことを頭に入れておこうぜ。
あとは、まぁまぁレアケースですが、他作品や電子書籍のヒットなどにより、紙の単行本が入手困難化する作品があります。こうなると高値がつきます。
Amazonにありがちですが、この場合も作者にはお金が行かないので注意ですね。

そうは言っても、漫画に沢山お金を使えない…
電子書籍の場合は、作品が割引されたり、クーポンが出る販売サイトがあります。色々なサイトをチェックして、オトクな場所を探してみるのもいいでしょう。
また、楽天ブックスは全品送料無料なので、単行本の送料が気になる場合に便利ですよ。
まとめ

漫画家だったことも編集だったこともないですが、いち漫画好きとして「打ち切りになる理由」や「中古品を買う」について、あまり知られていないのではないか?と気になっていて。
今、無料で読める漫画は本当に数多くあります。しかしこれは、少しでも多くの人に読んでもらうための手段です。
一部無料で公開するのも、色んな漫画アプリに掲載されるのも、購入特典描きおろしも、広告掲載も、売上に繋げたいから。無料で読ませるため、ではありません。
コメントを送ったり拡散したり、応援の形は様々ですが、どんな時でも一番の応援は「正規の場所で買う」ことを伝えたかったのです。
***
本記事を書くにあたり、各漫画家さんの発言を参考にさせていただきました。興味のある方は、文字上にあるリンクから各ページに飛べますので、見てくださいね。