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作品完結に伴い内容を整理しています(21.01.17~)
好きな漫画を記事にする本サイトですが、今回は番外編。とある漫画アプリのユーザーの間で、何かと話題だった作品について掘り下げたいと思います。
その作品――『圧勝』とは。
作品詳細・あらすじ
圧勝
小虎著:マンガワン連載
好きって何?大学生たちの恋愛模様
吉田さんは美人です。吉田さんはモテます。吉田さんはちょっとヘンです。吉田さんのことが…僕は好きです。
(マンガワン作品紹介より抜粋)
普通の大学生・篠山誠は校内で見かけたある女子を意識する。その女子が自分の住むアパートの隣人・吉田さんだとわかり、少しずつ一緒に過ごすようになる。
一方、山村ゆみは意中のカレ・高木涼が吉田に好意があると知り、友人・西園寺に吉田と「無理矢理」男女関係を持つよう依頼。
しかし吉田は西園寺の依頼をあっさり承諾。『君とも友達になれる』と意味深な発言付きで…。
ある時、ゆみの家を訪ねた涼はゆみに暴行する。その痕跡を見た西園寺は、涼に問いただしに行く。
その後「急変」した涼は、その場で殺人を犯してしまい―。
とある大学に通う生徒を中心に始まるラブ・サスペンス。
なぜ話題になったのか?そのカギは“謎”
7月26日の更新を持って、本作は完結。全183話、単行本は全13巻と人気作品になりました。
本作はコメント機能がある漫画アプリ『マンガワン』での連載でしたが、異例の「コメント欄閉鎖措置」がとられる程、読者のコメント内容が激しいことでも有名でした。
どうしてここまで騒がれた作品だったのでしょう?
実際に作品を読み読者の声を読み、調べた私なりの結論が以下です。
「わからないから」
わからないと理由を知りたいから、検索したりレビューも調べますよね。本作も、この後解説する「コメント欄閉鎖問題」などから、作品を調べる現象が起きているのでは?と感じます。
現に本記事も、当サイトの人気記事になってしまったw(完結した、新連載が始まったというのもあるだろうけど)。
それだけ『圧勝』に関して、何か気になるコトがあるユーザーが多い証拠だと思います。
また、本記事を書く私自身も、マンガワンのコメント欄で『圧勝』という作品があると知った1人です。
「某圧勝より面白い」
「圧○よりいいじゃん」

??
やたら「圧勝」って見かけるけど何の話??
と思って作品を知って、読んでみたのが始まりでした。
要は、特にマンガワンの中で“比較対象”として名前が挙げられる作品だったのです。
結果として、作品ページを見たユーザー+作品ページ以外で知ったユーザーのWで読まれた作品なんだと考えられます。
では、一体話題だったのか。2つの「謎」を見てみましょう。
謎1:無言のコメント欄閉鎖

特に、最近この作品を知った方はまず疑問に思っただろう、コメント欄閉鎖の件。
先ほども触れましたが、『圧勝』は公式コメント欄が閉鎖されています。コメントの投稿内容が荒れに荒れたためです。これを受け、2021年に始まった作者の新連載『ツキトウサギ』も、コメント欄が閉鎖中。
マンガワンはコメント欄の開放がデフォルトです。中にはコメント荒れ気味な作品もありますが、閉鎖措置になる作品は珍しいと言えます。しかも“途中から”。
結局、閉鎖措置に関する運営からのお知らせは無いままでした。
作者や作品に関わる方を守るための対応とも思えますが、作者である小虎さんのTwitterは返信(リプライ)可能な状態。中傷投稿から守るための閉鎖とは考えにくいんですよねえ…。
謎2:アプリ内とレビューのギャップ
グーグルにて作品名「圧勝」で検索すると、以下の関連ワードが表示されます。

「打ち切り」に絞ってみると………ここでは紹介したくない言葉も並んでいるようです。
この作品は本当に、色んな批判のされ方があります。コミックエッセイであれば酷評されている作品も見かけますが、一般的な「漫画」がここまで批判されるのは、あまり例がないでしょう。
では、実際に読んだ人の評価はどうだ?
大手サイトを中心に、第1巻のレビュー5段階評価の平均値を見てみよう。いずれも☆4以上は少なく、高評価とは言えないと読み取れる。
しかし、連載元では「ジャンル別閲覧ランキング」で毎回上位になる作品だった。
なぜ、連載閲覧数、漫画レビュー、Googleキーワードとこんなにも評価の温度差があるのでしょう…?
という疑問から、謎1と合わせて

あの作品は打ち切りになったのに…運営は圧勝を贔屓してるのでは?
などと、連載判断そのものへの疑問が挙がってしまったわけです。
ただ、これに関してはいち漫画好きとして補足しておきます。『圧勝』は、連載時に掲載されていた単行本告知ページでの情報を見るに、連載判断は不思議じゃない作品です。
単行本の売上があるからです。
画像は保存していないのですが、連載序盤(単行本4巻位だったかな…)で「あと少しで10万部!」という一文がありました。
漫画にはヒット作の基準はありませんが、この“発行部数情報”が加わるということは、ヒットと判断された作品だったのではないでしょうか。
ウェブ連載は単行本刊行後、売り上げが全て!と言われています。これは色んな漫画家がSNSで公言されています。連載終了は単行本が売れなかったからだ――と。
基本無料であるマンガワンも、例外ではないでしょう。つまり、読者の「否」が目立っただけで、単行本はしっかり売れていた可能性も考えられるのです。
ただ、数字の話は我々読者には届きにくいです。数字の割に反響が見えないことや、謎1・2をまとめて考えると、違和感が消えにくかった作品ではありますね。
感想

さて、話題になっていた理由を理解したところで、本作の感想に触れていきます。
(!ややネタバレ注意!)
全部読み終わりました。
正直登場人物が多く、ほとんどに何かしら起こるため、一度読んだだけでは記憶が定着しなかったです。
だからこの作品って、感想書くのが難しいんだよ。
150話過ぎたあたりから「薬」がどういうモノか、「吉田さんの過去」が見えて、物語が動いた感があった。
が、劇的な展開が!とはならず・・・アッサリ終わった印象が拭えません。
強いて言うならラストが一番の盛り上がりに見えたし、吉田さんは良かったなとは思う。
この「アッサリ」「淡々とした展開」は本作品の魅力とも言えるので、どう見るか次第ですね。
ということで、作品の特徴をピックアップ。
セリフや作画が非常に断片的
先にも書きましたが登場人物が多く、相関図片手に読まないと流れがわかりにくい。
で、わかりにくい理由のひとつが、作画。
単行本の表紙を見ても、かわいい絵なんだよ!けど、本編は人物の表情・動きがややワンパターン(後半は登場人物が限定されることもあり、違和感は減ります)。
セリフでカバーできない動きを作画で補うと思うのだが、できてない(しない?)。サイレント漫画みたいな雰囲気がある。
「薬」が効きはじめる描写が毎回一緒なところを見ると、苦手な動き・アングルは結構多そう。意図的でなければ。
この点が、評価が低くされてしまう一因なんだろうな。
だがそれ、今っぽいぜ…
この点に違和感を持ちつつも、別の言い方をすると「非常に今っぽい描写」。
年寄くさいけどさ、淡々とした短い言葉での会話ってなんか、現代的なんだよ。
こういう描写が合う層も当然いると思うし、面白いって意見があるのもわかりますね。
とっても「現代の漫画」だと思う
で、結局面白いのか?面白くないのか?
面白くなかったり、不快だったら全部読めないと思います。けどオススメしたい作品か?と言われると…。
同じ登場人物、同じセリフ、同じ展開を見ているのにこうも評価がバラつく作品は、そうそう無いぜ。
スマートフォンの普及により、無料連載の漫画も定着してきました。
また単行本も「紙」「電子」にわかれ、売れ行きにより電子のみになる、なんてことも普通になってきました。
だけど、色んな作品のコメントを読んでいると「無料連載」とはどういう意味か、何のために単行本が販売されるかまでは、読者に届いていない印象が強いです。
作品への感想がどれだけ好意的なものばかりでも、出版社は好意より数字を見ています。単行本が売れなきゃ、すぐに終わりです。
逆に数字が良ければ、作品への感想が悪くても連載できます。数字が良いので。
そういった意味でも、圧勝は「現代の漫画」としてわかりやすい作品と言えるのではないだろうか。